| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-253 (Poster presentation)
現在、地球の陸地面積の3%を都市部が占め、そこに世界人口の55%が集中している。都市化は、環境に強い変化をもたらし、生態系に強い影響を及ぼすことが報告されている。例えば、都市化は人工物(建物や道路)の増加などをもたらすことで、動植物の生息地を分断したりや破壊したりする。これまで、特定の生物グループの種数や個体数に及ぼす都市化の影響が明らかになってきたが、種間相互作用に与える影響はほとんど注目されてこなかった。ほとんどの種は他種と共生や寄生、捕食・被食など相互作用を通じて生態系の中で組み込まれている。つまり、ある種の絶滅や減少は種間相互作用を介して他の種へも波及するし、逆にある種の増加が別の種の絶滅や減少を引き起こす。このように都市化による動植物への影響を評価する上で、種間の相互作用を考慮することは重要である。本研究では、草本植物の繁殖器官から吸汁するカメムシ類に注目し、種間相互作用ネットワークに及ぼす都市化の影響を明らかにすることを目的とした。
淀川水系の河川敷9ヶ所で各250 mルートを設定し、2020年の7月から9月にかけて、草本植物とカメムシ類との相互作用を定量的に調査した。調査地点を中心に100mごとに100−2000mの同心円(空間スケール)を地図上に設定し、各範囲に含まれる人工物の割合をGISで求め都市化率の指標とした。結果、草本植物56種の繁殖器官から吸汁するカメムシ類43種(1939個体)を記録した。いずれの空間スケールでも種数とネットワーク構造(結合率、特殊化の程度)には都市化率との間に明確な傾向はみられなかった。しかし、個体数、花序数、種間相互作用数、ネットワークの構造(量的な入れ子構造)では一部の空間スケールにおいて都市化による影響が検出された。つまり、都市化は動植物の個体数だけでなく、動物と植食者間の相互作用ネットワークにも影響する可能性がある。