| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-266  (Poster presentation)

日本の森林生態系における土壌純無機化速度と火山灰加入の関係
The relationship of net soil nitrogen mineralization rates and volcanic-ash deposition in Japanese forest ecosystems

*佐々木真優(京大・農・森林生態), 向井真那(国際農研), 北山兼弘(京大・農・森林生態)
*Mayu SASAKI(Kyoto Univ. Forest Ecology), Mana MUKAI(JIRCAS), Kanehiro KITAYAMA(Kyoto Univ. Forest Ecology)

 窒素は樹木の成長を制限する重要な元素である。日本列島には南北に多様な森林が成立しており、土壌の窒素可給性の指標の1つである土壌窒素純無機化速度は他の土壌理化学性や気候、地上部の植生、土壌の母材など多くの要因が重なり合って決定されていると考えられる。これらの決定要因のうち、本研究では土壌の母材に着目する。日本は世界有数の火山国であり、火山灰をはじめとした火山噴出物が母材である土壌(黒ボク土)が広く分布する。黒ボク土は、活性アルミニウム・鉄を多く含み、それらが有機物やリン酸を強く吸着するという特徴がある。日本の森林生態系において、黒ボク土が土壌中の窒素動態に影響を及ぼすことを示唆する先行研究はあるものの、その影響は詳しく調べられていない。そこで本研究は全国の自然林から採集した土壌をもとに、日本の森林生態系における土壌窒素純無機化速度と火山灰加入の関係を明らかにすることを目的とした。
 北海道から鹿児島までの全国の環境省モニタリング1000のサイトを中心とする20か所の森林で表層土壌(30cm深)を採取した。採取した土壌を一定条件下(20℃, 10日間)で培養し、培養前後の無機態窒素濃度の差分から土壌窒素純無機化速度を求めた。火山灰加入の指標として、土壌中の活性アルミニウム・鉄の濃度を使用した。活性アルミニウム・鉄は火山灰起源の二次鉱物に含まれるので、この濃度から火山灰加入の影響の強弱を評価できると考えた。さらに、有機物濃度、リン濃度、交換態陽イオン濃度(カリウム・カルシウム・マグネシウム)などの土壌理化学性を測定した。有機物については全炭素濃度だけでなく、分解性に応じて分けた画分ごとの濃度も測定した。本発表では、火山灰加入指標と土壌理化学性の関係を示すとともに、窒素純無機化速度を目的変数とする多変量解析を用いて、火山灰加入が与える影響について考察する。


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