| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-269  (Poster presentation)

雪害による自然攪乱を受けたスギ林生態系における林分スケールの幹表面呼吸量の推定
Estimation of stand-scale stem surface respiration in Japanese cedar forest ecosystem after snow disturbance

*高橋春那(岐阜大・院・自然研), 斎藤琢(岐阜大・流域研)
*Haruna TAKAHASHI(Graduate School, Gifu Univ.), Saitoh M. TAKU(RBRC, Gifu Univ.)

雪害はスギ林における代表的な撹乱の一つであり、雪害がスギ林生態系の炭素循環過程へ及ばす影響を理解することは重要である。森林生態系の炭素循環の主要素の一つである幹表面呼吸量は時空間変動があることが報告されており、幹表面呼吸量を個体または林分スケールへスケールアップを行う際にその時空間変動を考慮する必要性が指摘されている。そこで本研究では、健全木(以下H)、樹冠一部残存木(以下BSc)、幹折木(以下BS)の樹冠状態の異なる3種類のスギを対象に幹表面呼吸量の季節変化と鉛直変化およびそれらの変動要因を明らかにし、その観測結果を考慮して、雪害による自然撹乱を受けたスギ林生態系の林分スケールの幹表面呼吸量を高精度で推定することを目的とした。また雪害による自然撹乱が林分スケールでの幹表面呼吸量に与える影響を評価するために、雪害前(2014年)と雪害5年後(2019年)の幹表面呼吸量を推定し比較した。
いずれの樹冠状態においても幹表面呼吸量は夏に高く冬に低い明瞭な季節変化を示し、幹表面呼吸量の季節変化の主要因は幹表面温度であることが示唆された。幹表面呼吸量の鉛直変化については、BSについてのみ多くの計測日で鉛直変化が見られたが、幹表面温度は要因ではないことが示唆された。これらの結果を考慮して林分スケールでの幹表面呼吸量を推定した結果、雪害5年後の年幹表面呼吸量は340.1 gC m-2 yr-1であり、雪害前の幹表面呼吸量と比較して小さな値となった。また、調査区の場所によってその変化量にはばらつきが見られた。
本研究の結果により、雪害による自然撹乱を受けたスギ林生態系において、幹表面呼吸量の時空間的な不均一性が増加することが明らかとなった。また、幹表面呼吸量をスケールアップする際は幹表面呼吸量の季節変化や鉛直変化に加えて、自然撹乱による被害の規模を考慮する必要があることが示唆された。


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