| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-274 (Poster presentation)
微生物の代謝基質である溶存有機態炭素(DOC)を多く含む樹幹流やリター浸出液は、土壌の微生物群集や微生物呼吸(MR)に影響を与えると考えられている。また、樹幹流が供給するDOCの量や質は樹種によって異なるとの報告もあるため、土壌圏に与える影響も樹種によって異なる可能性がある。そこで本研究では、コナラ林、カラマツ林、アカマツ林の3林分の樹幹流とリター浸出液を用いた土壌添加実験を行うことで、異なる林分の樹幹流やリター浸出液が土壌圏の微生物群集や炭素・窒素循環に与える影響を明らかにすることを目的とした。
本研究は長野県軽井沢市の早稲田大学軽井沢試験地で行った。2020年7月から11月にかけて3林分で樹幹流及びリター浸出液を採取し、DOC濃度や分解性の指標であるSUVA254などを測定した。また、コナラ林分において樹幹流の影響を受けにくい、立木から離れた地点から土壌を採取し、各林分で採取した樹幹流やリター浸出液を添加し、MR、土壌微生物バイオマス、土壌NH4+、NO3-量の変化を測定した。
樹幹流またはリター浸出液を添加した土壌ではMRは上昇し、微生物バイオマスは増加した。その際、樹幹流の中でDOC濃度や分解性が高いカラマツ樹幹流を添加した際にMRの増加幅が最も大きくなった。また樹幹流、リター浸出液を添加した土壌ではNH4+、NO3-量が純水を添加した土壌に比べて大きく増加しており、樹種によってもその増加量に差が見られた。これは土壌における窒素無機化や硝化が促進された結果であると考えられる。以上の結果から樹幹流やリター浸出液は微生物群集に正の効果をもたらし、土壌圏の炭素・窒素循環に影響を与えることが分かった。また、その際の影響の大きさは樹種によって異なることも明らかになった。