| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-284 (Poster presentation)
森林減少や劣化の進むボルネオ熱帯雨林では、バイオマスや樹木組成をもとに森林の健全度を評価することが求められている。樹木組成の健全度は劣化林指標種(先駆種)と原生林指標種(極相種)の混交比率で評価することが可能であり、地上調査に基づく評価手法は労力がかかることが課題となっていた。本研究ではコストを減らす手法としてドローンが活用可能か明らかにするため、ドローンとディープラーニングによって上空から指標種の識別が可能であるか、指標種の情報やドローンで得た3次元構造情報によってこれら森林健全度の指標が推定可能か検討した。
2019年にドローンで上空から撮影した林冠のRGB画像を現地調査により樹種を同定して教師データを作成した。識別対象は劣化林指標種の2属とし、EfficientNetB7にファインチューニングを行い識別モデルを作成し、精度を検証した。モデル実装時には28プロットにて撮影したドローン画像より作成したCHM(樹高モデル)をもとに林冠部とギャップに分け、林冠部に対して樹種識別を適用し劣化林指標種の林冠に占める面積割合を計算した。3次元構造情報はCHMの最大値、標準偏差、平均値および体積を用いた。また各プロットで撮影されたドローン画像の中心位置から半径20mの範囲で地上調査を行い、AGB(地上部バイオマス)及び樹木組成の健全度を調べた。地上調査で得たこれら健全度の指標がドローン画像から得た劣化林指標種などの面積割合と森林の3次元構造情報から予測可能か回帰分析により調べた。
結果として、劣化林指標種の識別は高い精度で識別できることがわかった(Kappa値0.727~0.860)。AGBについてはギャップ面積割合によって説明され、樹木組成の健全度は劣化林指標種ではない樹木と特定の劣化林指標種の林冠面積割合によって説明されることがわかった。以上の結果から、ドローン画像から特定の指標種の識別は可能であり、ギャップや指標種の情報がAGBや樹木組成の健全度評価に役立つことが示唆された。