| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-288 (Poster presentation)
急速な生物多様性の減少への危機感から、生物多様性と生態系機能の関係を検証するBEFの研究が行われている。多くのBEFの研究から、一般的に生物多様性は生態系機能を向上させると言われている。生物多様性が生態系機能を向上させるメカニズムは、ニッチの差異による資源効率利用から成る相補性効果と、機能の高い種の優占による選択効果から成る。相補性効果と選択効果は生物多様性による生態系機能への正味の効果(NBE)の加法分割により算出でき、生態系機能が向上するメカニズムを明らかにするために、生物多様性効果(NBE、相補性効果、選択効果)の研究がされている。しかし既存の生物多様性効果の研究は、単一栄養段階内の検証のみで、複数栄養段階の生物多様性や生物間相互作用を考慮した検証例はない。複数栄養段階を含む生態系機能には植物と送粉者の相互作用からなる送粉がある。送粉は多くの顕花植物の生殖に必要であり、重要な生態系機能であるが、生物多様性効果の研究例はない。
こうした背景から、本研究では、種子生産性への生物多様性効果を、植物と送粉者の生物間相互作用を踏まえて検証し、複数栄養段階の生物多様性が送粉生態系機能を向上させるメカニズムを検証した。
検証した結果、種子生産性への生物多様性効果は、相補性効果は正の効果が、選択効果は負の効果が見られ、NBEは正の効果を示した。相補性効果は、複数栄養段階の競争を緩和し、効率的な送粉を促し受粉効率を高めると考えられる、ネットワークの特殊化に起因し、選択効果は、送粉者獲得競争に伴う送粉ネットワークの均等度の低下に起因することが分かった。
本研究は、複数栄養段階の生物間相互作用に起因する生物多様性効果と送粉生態系機能を向上させるメカニズムを明らかにし、BEFの発展に貢献した。