| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-290 (Poster presentation)
瀬戸内海は、わが国最大の閉鎖性海域の一つであり、大小700以上もの島々が複雑な地形を構築している。その干満差は約3m以上であり、内湾奥部~外海まで多様な地形の干潟が存在している。既往研究では、干潟内において、底生動物は底質や標高などの環境要因により、生息種が多様化することが分かっている。瀬戸内海ではこれに加え、内湾の奥にあるか、外向きの海岸にあるかといった、場所の違いも種の多様化に貢献していると推測される。しかしそれを瀬戸内海において検証した事例はほぼない。そこで本研究では瀬戸内海の複数の干潟において、地形の違いによる干潟内部の環境変化と、底生動物の分布がどのように対応しているかについて調査・解析を行った。
対象地は、瀬戸内海に面した広島県に属する江田島(江田島市、10,070ha)、倉橋島(呉市、6947ha)およびその近傍にある本土側の干潟26地点である。
調査方法について、各干潟内の陸寄り・海寄り・その中間に調査エリアを設定した。最初に各調査エリアの周囲が開けているか狭くなっているかを示すために開放度の測定を行った。調査エリアの中心点から16方位に海岸線・構造物に接するまで直線を引き、海域に向いている9本の直線の合計距離を開放度とした。また調査エリア内ではランダムに3つの調査地点を設定し、各地点で衛星測位による標高測量、土の採取、底生動物の採取を行った。土は採取したものからシルトクレイの重量割合を算出した。底生動物は30cm四方の方形区内の土を掘りかえして1mm目の篩にかけ、残った種の同定と個体数測定を行った。
調査の結果、各調査エリアの開放度は最大で84.2km、最低で0.29kmであり、標高との間には緩やかではあるが、有意な負の相関が見られた。底生動物は140種が確認され、開放度の異なる干潟間では種組成が大きく変化する傾向が見られた。発表においてはこれらの結果について多変量解析を用いて定量的に分析・考察してゆく予定である。