| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-291  (Poster presentation)

声紋分析による北海道に生息するバッタ目の鳴き声の分類
Classification of Orthoptera calls using spectrogram analysis in Hokkaido, Japan

*中岡佳祐, 山田浩之(北海道大学)
*Keisuke NAKAOKA, Hiroyuki YAMADA(Hokkaido Univ.)

バッタ目の鳴き声は種によって異なることが知られている。これを利用して,聴覚での生息調査が行なわれることもあるが,音圧が小さい場合や周波数が人の可聴域を超える場合には調査が困難となる。一方で,鳴き声を用いた動物の調査には,声紋分析がしばしば用いられる。声紋分析とは,音声を可視化したスぺクトログラム上で,鳴き声を視覚的に判別する手法である。これをバッタ目の調査に適用することで,先の聴覚調査の問題点を解決できると考えられる。しかし,これまでバッタ目の声紋を整理した事例は限られている。バッタ目の声紋分析のためには,それらの特徴を明らかにしておく必要がある。そこで本研究では,キリギリス類とコオロギ類のうち北海道に生息する種を対象として,種間の声紋の違いを明らかにしたうえで,それを用いて種の分類が可能かについて検討した。調査は2019年から2020年の7月から10月にかけて,北海道内の草地において実施した。キリギリス類5種,コオロギ類4種の計9種を対象として,それぞれ複数個体の鳴き声を録音した。音声解析ソフトを用いてスペクトログラムを表示し,それより各種の声紋の最高周波数と最低周波数の平均値(中心周波数)と周波数幅,継続時間を計測した。各変量を種間で比較した結果,キリギリス類の周波数幅はコオロギ類よりも広いこと,両者の声紋は約8 kHzを境にして分離され,キリギリス類のほうが高周波域に分布することがわかった。また,各変量を用いてクラスター分析を実施した結果,キリギリス類とコオロギ類は分離され,特にコオロギ類では種ごとに分類された。これらのことから,対象地域の種群について,声紋の中心周波数と周波数幅,継続時間による分類が可能であると考えられた。


日本生態学会