| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-292 (Poster presentation)
沖縄県には日本の50%にあたるアリ類が記録されており、その多様性の高さから研究が盛んに行われてきたが、離島が多いことから分布調査が十分に行われていない地域も多い。与那国島におけるアリ類の調査も、高嶺(1990)による報告を最後に行われていない。本研究では、沖縄県の与那国島にてアリ類の分布調査と調査地の環境調査を行い、環境毎のアリ相を解析・考察した。
調査方法
沖縄県八重山郡の与那国島のほぼ全域をカバーするよう26箇所の調査地を設定した。調査は2020年3月10日~16日、同年6月26日~30日、同年10月21日~24日に行った。アリの採集は単位時間採集法(Time Unit Sampling)を採用し、これを各調査地で10回繰り返した。サンプルは70%エタノールにて保存し、可能な範囲で種までの同定を行った。環境調査は各調査地の中心付近にて頭上と地面の撮影を行い、写真からそれぞれフリーソフトを用いて樹冠開空度と植被率を計算し環境指標とした。さらに環境調査の結果から調査地を森林、原野、田畑・公園、市街地に分類し、タイプごとにアリ相を比較した。
結果
本調査で与那国島から採集されたアリは7亜科33属57種で、そのうち13種が初記録となった。今後調査を繰返すことでより正確な種数が得られると予測される。
全体の種多様度は開空度と弱い負の相関が見られ、種別の出現頻度は植被率との相関は3種のみで、開空度との相関は16種で確認された。環境タイプごとに採集されたアリの種数、在来種の割合、種多様度は森林>草原・田畑>市街地>原野の順に高くなった。また、森林では稀な種や初記録の種が多く採集され、種構成の調査地間の類似度が低かったのに対し、原野や市街地における種構成の類似度は高く、共通してみられる外来種や広域分布種が総種数の大半を占めた。環境の植生が複雑であるほど在来アリの生息環境が増え、種構成は多様化するが、単調であるほど外来アリの多い種構成に一様化すると推察される。