| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-299  (Poster presentation)

堆積物環境DNAを用いた琵琶湖における過去生物情報の再構築
Reconstructing past biological information in Lake Biwa using sedimentary environmental DNA approach

*坂田雅之(神戸大・院・発達), 槻木玲美(松山大・法), 加三千宣(愛媛大・CMES), 土居秀幸(兵庫県大・院・シミュ), 源利文(神戸大・院・発達)
*Masayuki K. SAKATA(Kobe University), Narumi TSUGEKI(Matsuyama University), Michinobu KUWAE(Ehime University), Hideyuki DOI(University of Hyogo), Toshifumi MINAMOTO(Kobe University)

過去生態系情報の復元は生物多様性の保全にとって重要であり、過去の情報を得るための手法としては生物の遺骸、化石や休眠卵など生物の直接的な痕跡を解析する方法が挙げられる。しかし、魚類に代表される堆積物中に直接的な痕跡が少ない分類群では、過去の生物情報を復元することは困難である。このような魚類情報の復元において、遺骸などの直接的な痕跡を用いずに過去の生物情報を推定する手法として、堆積物中に保存されたマクロ生物の堆積物環境DNA(eDNA)を利用できる可能性がある。実際に堆積物コアから得られたeDNAを用いて魚類情報を復元する試みはいくつか行われているが、それらの試みは低温環境や無酸素環境などのeDNAの保存に比較的適した水域に限られている。一方、eDNAの分解が比較的早いと思われる温帯湖では、過去の堆積物コアから堆積物eDNAを検出した報告はない。本研究では、琵琶湖を調査地として温帯湖における魚類情報の過去復元を試みた。琵琶湖北部の沖合で堆積物コアを採取し、アユ(Plecoglossus altivelis)とイサザ(Gymnogobius isaza)を対象として、種特異的なリアルタイムPCRを用いたeDNAの分析によって対象種のDNA検出を試みた。また、アユについては堆積物中のeDNA濃度の変動と漁獲量記録との関係を調べた。その結果、約100年前までの過去の堆積物層からアユのeDNAが、約30年前までの堆積物層からイサザのeDNAが検出された。これらの魚類の堆積物eDNAの検出は、これまでに報告されているようなeDNAの保存に比較的適した環境下だけでなく、温帯湖においても堆積物eDNAが長期間保存されていることを示している。このことから、堆積物コア中に長期間保存されている堆積物eDNAの解析を過去の魚類情報の復元に適用することが可能であると考えられる。


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