| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-308  (Poster presentation)

ヨウジウオ科魚類における配偶システム多様化に関わる分子基盤の解明
Differential gene expression profiles of monogamous and polygamous syngnathids

*笹平素生(弘前大学), 田口瑞姫(慶應義塾大学), 古川亮平(慶應義塾大学), 曽我部篤(弘前大学)
*Motoki SASAHIRA(Hirosaki Univ.), Mizuki TAGUCHI(Keio Univ.), Ryohei FURUKAWA(Keio Univ.), Atsushi SOGABE(Hirosaki Univ.)

同じ雌雄が繰り返し配偶する一夫一妻は、動物界全体で非常に稀な配偶子システムであり、その究極要因がさまざまな動物で古くから調査されてきた。一方、一夫一妻維持の至近機構について近年、齧歯類を中心とした研究が急速に進み、近縁種間で配偶システムの違いをもたらす神経伝達物質やホルモンの存在が明らかになりつつある。それらの分子遺伝基盤にはある程度、哺乳類の間で種を越えた共通性があることが報告されている。本研究では、系統的に遠縁の魚類でも、配偶システムの決定に哺乳類と共通する機構があるのか、あるいは魚類では独自の機構が進化したのか明らかにするために、配偶システムに著しい変異が存在するヨウジウオ科魚類において、配偶システム決定に関わる分子遺伝基盤の網羅的な探索を行った。一夫一妻の3種と複婚の2種の全脳のトランスクリプトームを雌雄別に比較したところ、配偶システムに応じて発現量に差のあった遺伝子は、雌では2個見つかったが雄では見つからなかった。次に、近縁でありながら配偶システムの異なるヨウジウオ(複婚)とH. abdominalis(一夫一妻)の系統と、ガンテンイシヨウジ(一夫一妻)とオクヨウジ(複婚)の系統で、雌雄別の種間比較をそれぞれ行い、系統間で共通して一夫一妻種と複婚種の間で発現量に差のあった遺伝子を調べたところ、concordantな発現パターンを示した遺伝子が雄で13個、雌で12個見つかり、discordantな発現パターンを示した遺伝子が雄で4個、雌で7個見つかった。本研究で見つかった配偶システムに関連する候補遺伝子とその機能アノテーションをもとに、ヨウジウオ科魚類における配偶システム決定機構の独自性および哺乳類との共通性を考察する。


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