| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-313  (Poster presentation)

日本産クワガタムシ類における共生酵母との共進化
Co-evolution between Japanese stag beetles and symbiotic yeasts

*上木岳(信州大学), 東城幸治(信州大学), 久保田耕平(東京大学)
*Gaku UEKI(Shinshu Univ.), Koji TOJO(Shinshu Univ.), Kohei KUBOTA(Tokyo Univ.)

クワガタムシ類の雌成虫は腹端部に菌嚢をもち、その中にキシロース発酵性の強い酵母を保持することが明らかになっている。この酵母は幼虫へと垂直伝搬され、摂食する腐朽材の分解を補助していると考えられる。クワガタムシ類は祖先的な種群では褐色腐朽材を選好し、派生的な種群は白色腐朽材を選好する。さらに種ごとに棲息する標高帯が異なる。本研究ではクワガタムシ‐共生酵母の系統関係を解析することにより、クワガタムシ類の種や分布標高、選好する腐朽材のタイプと酵母の系統の関係を追究した。共生酵母の核rRNA遺伝子ITS領域およびIGS領域に基づく解析の結果から、共生酵母の系統は、まず宿主クワガタムシの選好する腐朽型に対応して大きく分化し、その中でも棲息する標高帯、そしてクワガタムシ類の系統分化やより細かな食性の違いに応じて共生酵母も分化するという階層的な構造が認められた。さらに別属のクワガタムシ種間で共生酵母の水平伝播が示唆された。このことから共生酵母は垂直伝搬のみならず、同所的に棲息するとともに選好する腐朽材のタイプが類似するクワガタムシ種間においては水平伝播した可能性が示唆された。


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