| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-323 (Poster presentation)
オルガネラゲノム(葉緑体・ミトコンドリア)が母性遺伝であることは、生物界の普遍的原則として広く受け入れられているが、高等植物においては父性遺伝・両性遺伝の種の存在が複数報告されている。これら父性・両性遺伝の出現は、離れた系統関係にある種で複数回生じているため、各種で独立に進化した結果であると考えられている。しかし、母性遺伝以外の植物種に共通した特徴や、これらが母性遺伝と比較して有利になる状況は明らかになっていない。そこで、母性遺伝と母性遺伝以外の種の生態的特徴を比較し、父性・両性遺伝という特殊な遺伝様式の出現・固定に至った生態要因の解明を目指した。本研究では、遺伝様式が明らかになっている被子植物と裸子植物の両方を含む374種(298属、111科)を対象にした。植物形質の情報はTRYデータベースより取得し、生存や繁殖に大きく関係しているとされる6形質(樹高(草高)・茎密度・葉面積・葉面積あたりの葉重・葉の乾燥重量あたりの窒素濃度・種子重)について整理、統合した。これらを用いてロジスティック回帰による分析を行い、遺伝様式に寄与する形質の探索を試みた。その結果、オルガネラゲノムの遺伝様式に関係していると考えられる形質が示唆された。今後はこの結果が植物種に対してどのように有利に働くかを検証する必要がある。