| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-328  (Poster presentation)

琉球列島のヒヨドリはミトコンドリアDNAと核DNAで異なる系統を示す
Brown-eared Bulbul in the Ryukyu Archipelago shows different phylogenies in mitochondrial and nuclear DNA

*望月みずき(我孫子市鳥の博物館, 九州大学), 西海功(国立科学博物館, 九州大学)
*Mizuki Kojima MOCHIZUKI(Abiko City Museum of Birds, Kyushu Univ.), Isao NISHIUMI(NMNS, Kyushu Univ.)

ヒヨドリHypsipetes amaurotisは日本から韓国、フィリピン北部にかけて分布しており、全11亜種が知られている。日本国内にはそのうち8亜種が記録されており、基亜種amaurotisは北海道から屋久島までの地域で繁殖し、一部の個体は冬季に南へ渡りを行う。その他の亜種は南西諸島や小笠原諸島、硫黄列島など島ごとに亜種が分かれており、殆ど渡りを行わないとされている。近年行われたmtDNAのバーコーディング領域の解析によると中琉球のヒヨドリは他とは異なる古い系統群であることが分かった他、小笠原諸島のヒヨドリは石垣・与那国に近縁で、硫黄列島のヒヨドリは伊豆諸島に近縁であることが明らかになった(Sugita et al. 2016)。しかしmtDNAは母系の系統しか反映しないため、mtDNAと核DNAで異なる系統を示す可能性がある。そこで核DNAイントロンの08352領域、12021領域(Bäckstrom et al. 2008)の解析を行い、ハプロタイプネットワーク図を作成した。その結果、核DNAはミトコンドリアと異なる結果を示し、中琉球の個体群は本州や他の地域と同じハプロタイプを共有していた。要因として、島に生息するヒヨドリは小さな個体群であるため遺伝的浮動によってミトコンドリアの偶然的な固定が起こった可能性がある他、本州の亜種amaurotisの雄が越冬期に中琉球へ渡り定着したことによる核DNAの遺伝子移入が起こった可能性が考えられる。しかし、核DNAの2遺伝領域のみでは集団の系統を正確に反映しているとは限らず、また各島における解析サンプル数も不十分であるため、今後は解析個体数を増やすほか変異速度の速い一塩基多型(SNP)の解析を検討する。


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