| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-340 (Poster presentation)
「なぜ同じ植物種の振る舞いが原生地と侵略先の間で異なるか」を理解することは、外来種の侵略成功要因の解明、また自然生態系における群集構造の理解に貢献しうる。近年、植物と微生物の間、および微生物間の相互作用が植物の適応度に影響することが注目されている。外来植物は侵入先において原生地とは異なるさまざまな微生物と相互関係を持つはずであるが、外来植物に付随する微生物群集が原生地と侵略先でどのように異なるか、またその違いが侵略性にどの程度寄与するかについては未解明である。 日本を含む東アジア原産の低木マンリョウ(Ardisia crenata)は、北米南東部のフロリダなどでは庭木由来の集団が侵略的外来種として生態系を撹乱する。局地的密度は侵入先のフロリダでは林床の100% にも及ぶ。個体群密度が低い日本でも顕著な植食者や種子捕食者が存在しないため、観察される日米間の密度の違いには原生地個体群と侵入先個体群間の微生物群集の違いが寄与していると推測できる。本研究では原産地と侵入先それぞれの個体群においてDNAメタバーコーディングにより葉、根、根圏土壌の細菌及び真菌群集組成の探索的解析を行い、外来種の侵略成功に微生物群集が果たす役割を評価することを目的とした。 マンリョウに付随する微生物群集構造は細菌、真菌のいずれにおいても葉、根、根圏土壌の間で大きく異なり、その種多様性は、根内において細菌、真菌ともにフロリダにて日本の自然林よりも低かった。これは原生地の微生物群集の一部が侵入地では欠落していることを示唆する。また微生物群集構造は原生地と侵略先の間で異なり、ことに葉内真菌の群集構造は大きく違った。これらの結果は、侵略先での新たな植物―微生物間の関係を示唆する。また原生地個体にのみ出現する病原性真菌属が検出されるなど、マンリョウの侵略成功要因と成り得る生物間相互作用を示唆するデータが得られた。