| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-344 (Poster presentation)
温暖化の進行は、南方起源の外来植物の侵略性を増大させる可能性があるが、その影響及びメカニズムの詳細は未解明な点が多い。本研究では、熱帯アメリカを起源とする侵略的一年生外来草本Bidens pilosa var. pilosaのフェノロジー・繁殖に及ぼす温暖化の影響を明らかにすることを目的とし、温度条件の異なる2地点に生育する個体群の比較(野外調査)と、各種実験を行った。
調査地は同一河川流域で、年平均気温が約3 ℃異なる2地点(東広島と呉)に設置した。野外調査では、1-1)発芽および実生の成長度、1-2)開花および種子生産を調査した。また、2-1)発芽実験で種子の温度特性を、2-2)栽培実験で生育期間の変化が及ぼす影響を、2-3)日長実験で開花の誘導要因を調べた。
調査1-1では、両調査地で冬季の実生の出現および成長が確認されたが、より温暖な呉の方で実生数が多く、成長も顕著であった。また実験2-1から、本種の種子は幅広い温度域で発芽可能であり、温度条件が高くなるほど発芽に要する時間が短いことが明らかになった。以上のことから、温暖化によって冬の発芽・成長が促進されることが示唆された。このような発芽の早まりは、生育期間の延長に繋がると考えられる。実験2-2から、生育期間が長くなることにより、一個体あたりの種子生産数が増加することが明らかになった。同様の傾向は、調査1-2で呉において確認された。加えて、調査1-1では冬に発芽・成長した実生の一部が春までに開花・結実に至ることが確認され、実験2-3によってその原因が冬の短日条件であることが解明された。これらのことから、温暖化は単に本種の発芽時期を早め、生育期間を延長(種子生産力を増加)させるだけでなく、開花フェノロジーをも大きく変化させ得ることが明らかになった(年二花性)。このような開花フェノロジーの変化は、一個体あたりの生育期間を短くするものの、個体群全体の年間種子生産数を飛躍的に増加させ得ることがモデルによって予測された。