| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-350  (Poster presentation)

国内に定着した外来ナメクジの食性 【B】
Food habit of introduced slugs 【B】

*小松航, 佐伯いく代(筑波大学)
*Wataru KOMATSU, Ikuyo SAEKI(Univ. of Tskuba)

外来種の侵入は、在来生態系に深刻な影響を与えることがある。特に草食性の外来種の侵入は、在来植生に大きな被害を及ぼすことが知られており、海外では外来ナメクジによる植生の改変が報告されている。一方、我が国においてはマダラコウラナメクジ(Limax maximus)やチャコウラナメクジ(Ambigolimax valentianus)などの外来ナメクジが定着しているが、その食性についてはほとんど調べられていない。そこで本研究では、外来ナメクジの植物に対する採餌特性を明らかにすることを目的とした。まず、嗜好性の有無を調べるため、給餌試験を実施した。実験対象種には、上述の外来ナメクジ2種の他、比較のため在来ナメクジ2種及び在来カタツムリ3種を用いた。これらに23種の植物とレタスを同時に給餌し、レタスに対する実験植物の被食量の割合(以下AI値; Dirzo 1980)を算出した。その結果、外来ナメクジは一部の植物で高いAI値を示し、特定の植物を好んで食べることが判明した。在来カタツムリも一部の植物に高いAI値を示したが、嗜好性の強弱を非計量多次元尺度法を用いて比較したところ、外来ナメクジとは異なるパターンをもつことが示された。在来ナメクジ2種は、ほとんどの植物に対して採餌行動がみられなかった。次に、AI値の高かったキク科植物3種を対象に、土壌と植物を入れたメソコズム空間を設置し、マダラコウラナメクジを入れて疑似的自然環境下での採餌行動の有無を検証した。その結果、いずれの植物においても採餌行動が確認された。さらに、野外で採集したマダラコウラナメクジの糞からDNAを抽出し、葉緑体DNAのrbcL領域を対象として、メタバーコーディング解析を行った。糞からはキク科、クズ属、ドクダミ属などの維管束植物が検出され、自然環境下でも植物を食べていることが確認された。以上のことより、外来ナメクジは、特定の植物を嗜好し、移入先の植生に何らかの影響を与えている可能性があると考えらえた。


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