| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-353 (Poster presentation)
外来種の侵入は在来生態系に大きな影響を及ぼす可能性があり、生物多様性保全において重大な脅威である。特に、島嶼生態系は生物多様性のホットスポットである反面、外来種の侵入による影響を受けやすい。外来種の分布情報とその分布モデリングは外来種対策において最も重要な情報の一つである。さらに、カエル類はその生活史特性より繁殖には水場が必要不可欠であるため、外来カエル類対策においてその種の産卵場所の特性を明らかにし、潜在的なハビタットの予測を行うことも重要である。
本研究では、佐渡島における外来カエル類であるアズマヒキガエルとウシガエルの分布状況を把握し、その分布を制限する環境要因を景観的要因、産卵池、移入地からの空間的距離の面から明らかにする。また、両種の分布様式と産卵池の利用様式から、種間の相互作用が与える影響についても検討する。さらに、ヒキガエルに対する重要な捕食者であるヤマカガシの分布を把握し、ヒキガエルの分布に与える影響を検討する。
外来カエル類の分布モデリング解析の結果、ヒキガエルでは「移入地点からの距離」のみが、ウシガエルでは「標高」と「移入地点からの距離」が分布を規定する要因となっていた。一方、ヒキガエルの分布に対しては、ウシガエルとヤマカガシの分布確率の影響は見いだされなかった。産卵池の利用様式に関する解析の結果では、ウシガエルのみで「水深」などの産卵池に強く選好性を示す要素がみられた。
本研究の結果より、佐渡島における外来カエル類2種は移入地点から分布を拡大させていることが示された。特に、ヒキガエルよりも40年程早く佐渡島に移入されたウシガエルについては既に分布を生息可能域全体に拡大させたことが示唆された。一方、ヒキガエルとウシガエルでは選好性を示す景観や産卵池に違いが見られ、ヒキガエルではより幅広い環境で生息できる性質を有することが示唆された。