| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-358 (Poster presentation)
【はじめに】外来種と在来種の交雑により、在来種の生態的特性を一部獲得することで移入先の環境に適応した雑種が生まれ、分布を拡大することがある。こうした雑種の分布拡大を防ぐには、雑種の形成から分布拡大のプロセスと生態的特性を理解することが重要である。無性生殖で繁殖する雑種タンポポは、日本各地に拡がっており、多くの地域ではセイヨウタンポポより雑種の個体数の方が多い。雑種タンポポには成長特性の異なる複数のクローンが存在することがわかっており、異なる環境に適応した雑種クローンが様々な場所に定着することで分布を拡大した可能性がある。そこで、大阪府周辺の10地点における8 年間のクローン組成の変化を調べ、それぞれの場所に適応したクローンが定着しているかどうかを確かめた。
【方法】2019年に各地点から雑種タンポポの果実を採集でDNAを抽出し、葉緑体DNAのtrnL-trnF領域とフローサイトメトリーで測定したDNA量に基づいて四倍体雑種と三倍体雑種に分類した後、11個のSSR遺伝子座で遺伝子型を決めた。遺伝子型から各個体をクローンに分け、8年前(2011年)の結果と比較した。
【結果】調査地には個体数の多い主要クローンが3つあり、いずれも8年前と同じクローンであった。各地点の主要クローンの組成は、一部の地点を除いて8年間に大きな変化はなかった。変化がみられたのは、8年間に生育環境に変化が起きたと考えられた地点だった。これら主要3クローンには、頭花を多くつけるr戦略的な成長特性を持つものと葉が大きくなるK戦略的なものがあることが過去の栽培実験で分かっている。クローン組成は環境の変化に応じて変化し、工事等によってより明るい環境になった地点ではr戦略的なクローンが、長期にわたって安定した草地であった地点ではK戦略的なクローンへと組成が変化したことが示唆された。