| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-359 (Poster presentation)
【はじめに】大型の草本外来植物であるセイバンモロコシ(Sorghum halepense)は、河川敷の草地において蔓延し、生態系保全および管理上の問題となっている。本種が蔓延している福岡県南部の宝満川堤防においては、酸性が強くかつリン酸と交換性Caについて貧栄養的な土壌には本種は分布していないことが報告されている。しかし、これは野外での現象であり他の要因が本種の分布に影響している可能性が否定できない。そこで、他の要因を排除して土壌化学特性と本種の生育の関係性を解明するため、栽培実験を行った。【材料と方法】実験1:強酸性・貧栄養である非アロフェン質黒ボク土表層土壌(宮城県大崎市)にリン酸(H3PO4)と石灰(CaCO3)を段階的に添加し、休眠打破・催芽処理したセイバンモロコシ幼苗を移植し、25℃/35℃,明/暗を12h/12hの条件下、インキュベータ内で42日間栽培し、生育量を測定した。実験2:石灰添加によりもたらされるpH上昇とCa量増加の2つの効果を分離して評価するために、炭酸カリウム(K2CO3)でpHのみを上昇、塩化カルシウム(CaCl2)でCa量のみを増加、石灰(CaCO3)で両方を上昇・増加させた土壌においてセイバンモロコシの栽培実験を行った。【結果と考察】実験1より弱酸性(pH(H2O)>6)かつ高可給態リン酸(Bray II P>200 mg P2O5 kg-1)・高交換性Ca(>25 cmolc kg-1)の土壌でセイバンモロコシの生育量が最大であった。加えて石灰あるいはリン酸の無添加区では、本種は最大生育量の0.5~4 %程度と著しく生育阻害を受けていた。実験2よりpHのみを上昇させた土壌、Ca量のみを増加させた土壌における生育量は、最大生育量の0.1~2 %程度と著しく小さかった。以上よりセイバンモロコシは(1)pHが高い、(2)リン酸供給能力が高い、(3)Ca供給能力が高い、の3つの土壌条件の内、どれか1つでも欠けると生育できないことが明らかとなった。河川敷の草地において造成時に施用されるリン酸や石灰が本種の蔓延を助長している可能性が示唆された。