| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-365 (Poster presentation)
高山帯では、温暖化に伴う気候変動により高山植物群落のフェノロジーや分布域の変化が予想されており、採食植物の減少や生息可能域の縮小などがニホンライチョウの個体群維持において懸念されている。本研究では本種の雛が安定して観察されている北アルプス太郎山、北ノ俣岳、立山雷鳥沢を対象とし、GISを用いた広域的なハビタット解析を行った。現地観測は2014~2019年の期間で育雛初期にあたる7~9月で実施した。観察した家族はのべ28組であった。行動観察に並行して観測地点(10分毎)および採食地点(30分毎)にGPSで測位した。植生調査は、採食地点および30分毎の行動位置を定点として100×100cmのコドラートでBraun-Blanquet法にて実施し、TWINSPAN解析により分類した。画像分類は市販の航空写真(NTT空間情報)とDEM5mメッシュ(国土地理院)から作成した傾斜角図を用いてArcGIS10.6で解析した。オブジェクトベース・ISOクラスターの教師なし分類の後、現地写真、植物構成、TWINSPAN解析結果より景観を再分類した。行動軌跡は10m幅で設定し、軌跡上での景観割合を算出した。今回は太郎山と北ノ俣岳について報告する。平均被覆率は太郎山では96.4%、北ノ俣岳では97.2%と裸地のない場所をよく利用し、スゲsp.、ササsp.、チングルマ、ガンコウランの被覆率が高かった。景観は11個に分類され、面積割合の高い順に「ハイマツ群落」:23.8%、「湿性草原群落」:15.8%、「雪田植物群落」:14.4%であった。本地域での主な利用植生は、「湿性草原群落」:48.1%と「雪田植物群落」:24.9%であり、合計で約7割を占めていた。以上より、育雛初期における太郎山・北ノ俣岳の雛は、「湿性草原群落」や「雪田植物群落」を高頻度で利用していることが明らかになった。