| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-370 (Poster presentation)
都市緑地は生物多様性保全や生態系サービスの供給において重要な役割を担っている。しかし都市緑地の環境は人々の価値観や認識の違いにより大きく変化するため、人々の意思決定が生物多様性保全の実効性の鍵を握っている。そのため、生物多様性に対する人々の認識の解明は、保全戦略の検討などを通して、都市における効果的な生物多様性保全の実施に寄与する。
都市緑地などの人為的攪乱により維持されてきた草地では適度な管理が植物の多様性を高めることが先行研究によって示唆されている。しかし、都市公園における過度な管理や芝生の整備、里山における耕作放棄による多様性の低下が問題となっている。
都市公園の景観では、多様性の低い芝地は適度に管理された草地よりも都市住民に好意的に認識されると示されているが、里山景観では、放棄地よりも適度に維持された多様性の高い草地が好まれることが予想され、利用目的や性質が異なる草地では多様性に対する人々の認識が異なる可能性が考えられる。そこで本研究では、異なる性質を持つ緑地(都市公園、里山)において、管理強度に対する人々の認識と多様性保全の目標との間にある関係性を明確にし、それぞれの都市緑地における今後の管理の検討に貢献する。
また、先行研究より植物の多様性に対する人々の認識は花や種数に左右されると示されているが、ほとんどが群集レベルでの視界に限定して議論されている。しかし、人々は群集から景観レベルまで様々な空間スケールにおいて緑地を知覚するため、景観として捉えた緑地の特性により多様性への人々の認識が変化する可能性がある。
以上の背景を踏まえ、性質の異なる緑地(都市公園、里山)において、管理強度に対する人々の認識と多様性保全の目標との関係性について、異なる空間スケール(景観、群集)の写真を用いたアンケート調査によって検証した結果を紹介する。