| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-380  (Poster presentation)

北海道野幌森林公園におけるエゾクロテンの生息分布変化
Distribution change of sables in Nopporo Forest Park, Hokkaido, Japan

*芦非煙, 池田透(北海道大学)
*Feiyan LU, Tohru IKEDA(Hokkaido University)

在来種エゾクロテン(Martes zibellina brachyura)は日本の中で北海道にのみ生息し、環境省のレッドデータブックにおいても「準絶滅危惧」に指定されている貴重な野生動物である。1940年代に外来種としてのニホンテン(Martes melampus melampus)が太平洋戦争末期に毛皮獣業者によって本州から北海道に持ち込まれ、その後個体が逃亡や遺棄などによって道南に定着した。その後、外来種ニホンテンの分布が拡大して、現在は石狩低地帯以西はニホンテンに占有されている状況となっている。それに対して、エゾクロテンの生息域はかなり減少し、現在の記録は石狩低地帯以東の地域に制限されている。本研究では、エゾクロテンとニホンテンの生息地の接点に当たる野幌森林公園において、自動撮影カメラを用いて、テン類の関係性の変遷について保全生態学的見地から分析を試みる。一年半にわたって撮影された画像データはRAI(撮影頻度指標:Relative Abundance Index)を用いて,100カメラ日当たりのRAIを算出した。その結果、先行研究では、エゾクロテンの生息情報は野幌森林公園南部の林央部に集中し、北部に少なく分布していたが、現在のエゾクロテンの生息情報は変化していて、北方向へ移動する傾向がある。そして、活動は夏季に高く、冬季と秋季には低い傾向にあった。また、天然林、とくに針広混交林を選択する傾向が一番強く、人工林と広葉樹林の選択性は低い。一方、外来種ニホンテンは撮影されなかった。今回の調査は在来種エゾクロテンと外来種ニホンテンの接点の調査とはならなかったが、『北海道江別市基本計画』からみると、野幌森林公園の周りはまた続けて開発が進められる予定である。外来種ニホンテンの進出がさらに容易になるので、野幌森林公園のテンの研究を継続している必要がある。


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