| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-381 (Poster presentation)
都市近郊丘陵地では、近年になり萌芽更新の再開された場所がある。里山の半自然草地の減少に伴い、訪花昆虫の多様性低下が予想される中で、萌芽更新地が植生の観点で半自然草地の代替となるか、また訪花昆虫のレフュージアとなるかを明らかにする必要がある。そこで本研究では、狭山丘陵(埼玉県)の小規模萌芽更新地にて、植生管理と開花植物と訪花昆虫の関係を調べて、保全の有効性を検討した。
ボランティアが管理を行っている区画(約900㎡,区画内)と行っていない区画(約1000㎡,区画外)に区分して、2020年3月から11月に調査を実施した。訪花昆虫調査では、ハチ類、ハエ類、チョウ・ガ類、甲虫類を対象とした。開花フェノロジー調査では、区画内/外の草本の開花量と木本の開花状況を記録した。その記録から開花開始日及び終了日を推定して開花日数を算出した。解析では、植物ごとの昆虫の訪花日数と訪花率に基づきクラスター分析を行った。また開花日数について検定を行い、区画内/外と草本/木本で比較した。
その結果、62種の草本と10種の木本で訪花が確認された。草本でも木本でもコハナバチ/ヒメハナバチ科及びヒラタアブ亜科が優占していた。区画内/外に共通する草本種の総開花日数は、区画内で有意に長かった。また草本の総開花日数は木本と比べて有意に長かった。木本は一度に多くの花をつける種がみられたが、種間の開花連続性が乏しい時期もあった。
訪花昆虫の餌資源として草本と木本は不可欠だが、特に草本が十分に開花できる環境が重要だと推察される。区画内では定期的な下草刈りや上層木の伐採が行われており、訪花昆虫の餌資源の確保に間接的に関わっているとみられる。しかし開花日数が極端に長い草本では、一部のグループの訪花昆虫しかみられなかったので、開花日数の大幅な延長が様々な昆虫の訪花を促すとは限らないとも考えられる。