| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-387  (Poster presentation)

霧ヶ峰高原における鳥類群集と植生および周辺土地利用との関係
Relationship between bird communities and the vegetation in addition to surrounding land uses in Kirigamine Highland

*小木曽快(信州大院・総合理工研), 大窪久美子(信州大学農学部)
*Kai KOGISO(Shinshu Univ Graduate School.), Kumiko OKUBO(Shinshu Univ of Agriculture.)

草原性鳥類の減少は全国的課題であり、本研究の目的は、草原環境が卓越する霧ヶ峰において、鳥類群集と植生環境および周辺土地利用との関係性を明らかにし、過去との比較から群集の環境や多様性評価と保全策の検討をすることとした。霧ヶ峰において先行研究(中村1963・堀田ら2006)を一部参考にして6調査地区を設定し、主にラインセンサスによる群集調査、相観による植生調査、現地踏査および空中写真判読による土地利用調査を実施した。
全調査では46種5,397羽が確認された。全地区の個体数の上位優占5種には草原性鳥類であるノビタキ(39.0%)とホオアカ(20.3%)、森林性鳥類のシジュウカラ(7.4%)や低木が侵入した草原や森林ではモズ(6.3%)とウグイス(5.7%)が含まれた。また、ビンズイの生息環境が低茎草原(トダシバ型)から高茎草原(ススキ型)へと移行し、コヨシキリの生息環境の減少、ガビチョウの移入等の群集の変化の要因は、植生遷移の進行によると示唆された。約50年前(諏訪教育会 1978)と同様に現在もノビタキとホオアカは霧ヶ峰における主な構成種であった。今回、ノビタキの出現数と森林面積の間で有意な負の相関があり、TWINSPAN解析では草原性種群は樹林化が進行して閉鎖的な環境では出現が少ない傾向があった。今後、霧ヶ峰においてさらに植生遷移が進行することで、これら草原性鳥類の生息環境が縮小、分断化し、個体数の減少を招く恐れがあり、森林要素と強い関係のある種の増加が予想された。全国的な草原環境の減少で、霧ヶ峰は草原性鳥類の繁殖地としてだけではなく、草原を利用する渡り鳥の中継地としても重要な役目を担っている。このような種を含めた草原性鳥類を保全するためにも大規模で連続的な草原環境を維持する必要がある。本研究はJSPS科研費 JP19K06107の助成を受けたものである。


日本生態学会