| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-389  (Poster presentation)

生息地ネットワークとパッチの攪乱実験から導くミヤマシジミのハブ・パッチの保全策
Developing conservation strategy for the butterfly Plebejus argyrognomon in agricultural landscapes from habitat networks and disturbance experiments.

*出戸秀典, 宮下直(東京大学)
*Hidenori DETO, Tadashi MIYASHITA(Tokyo Univ.)

メタ個体群を形成する生物の保全には、生息地パッチの配置と局所個体群動態によって駆動されるメタ個体群動態のネットワーク構造をもとに、そのハブとなるパッチを特定し、優先して保全を行うことが必要である。更に、その生息地パッチの局所管理がどのように局所個体群動態に影響を及ぼすかも詳細に調べることで、「どこで」「どのように」保全を行うことがメタスケールにとって重要かを明らかにすることができる。
本研究では、農地の畔や土手に生息する絶滅危惧種ミヤマシジミを対象に、(ⅰ)4年間11時点の個体群動態からハブ・パッチを特定することと、生息地パッチでの2年間の草刈り実験から、(ⅱ)局所個体群にとっての最適な攪乱頻度と強度及び、(ⅲ)攪乱による生息地の質への影響を明らかにすることを目的とした。
(ⅰ)では、ネットワーク構造の指標である固有ベクトル中心性をハブ・パッチの指標として用いた。固有ベクトル中心性は11時点の連結性行列からそれぞれ算出し、その平均値から保全優先順位を求めた。また、その時間変化の要因も考察した。攪乱実験では、攪乱強度を3段階(地際刈り・10㎝高刈り・20㎝高刈り)、攪乱のタイミングを2つ(6月刈り・7月刈り)、攪乱頻度を3段階(0回刈り・1回刈り・2回刈り)とした。(ⅱ)では、成虫密度と幼虫密度変化率が攪乱からの経過時間と攪乱強度によってどのように変化するかを、(ⅲ)では、重要な生息地の質である共生アリや食草被度、ヤドリバエからの寄生率が、攪乱頻度と強度、土壌や周囲の樹冠面積によってどのように変化するかを、それぞれ一般化線形混合モデルで検証した。
以上から、局所個体群サイズを最大化させる攪乱の頻度・強度・タイミングとそのメカニズム、それをメタスケールに応用するための生息地パッチの優先順位を明らかにした。


日本生態学会