| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-390 (Poster presentation)
ヒクイナは世界的に個体数が不明だが減少傾向にあるとされ、各都道府県が作成するレッドデータブックにおいては、35都府県で絶滅危惧種に指定されている鳥類である。今後、保全策をとる必要性が生じると考えられるが、そのためにはまず正確な個体数を把握することが重要と考える。これまでのヒクイナの生息状況を調査する手法としてプレイバック法が用いられているが、この手法による正確かつ効率的な調査を行うためには、対象種からの反応を期待しやすい活動時間帯を知っておく必要がある。そこで本研究では、ヒクイナの繁殖期における日周行動について明らかにすることを目的とした。
東京都江戸川区に位置する葛西臨海公園を調査地とし、2020年4月~9月にかけてカメラトラップとレコーダーの録音によって日周行動の調査を行った。カメラトラップの結果では、ヒクイナは4~19時に観察され、夜間には撮影されなかった。また、繁殖期の前半と後半で、カメラに撮影される時間帯の傾向に違いがみられ、繁殖期の前半は朝に出現の偏りがみられた。レコーダー調査からはヒクイナは4時から17時に、その他の時間帯と比較してより多く鳴いていたことが明らかとなった。
カメラとレコーダーから得た記録からは共に昼間に活発であるということがわかり、昼行性の習性を持っていると考えられた。また、繁殖期の前半のカメラの記録で朝に偏りがみられた理由は、縄張りを確立するためではないかと考えられた。これは、近縁種のクイナでは縄張り確立前後で行動が変わることや、鳥類では縄張りを確立するために繁殖期初期に朝の行動が活発化することが知られていることから、ヒクイナも同様の傾向があると考えたためである。本研究で得られた知見はプレイバック法による正確な個体数推定に寄与できると考えられ、ヒクイナの保全に対する貢献が期待される。