| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-392 (Poster presentation)
自然資源を利用した観光産業は、自然環境を劣化させる危険性が指摘されている。このため、特に世界自然遺産地域をはじめとする保護区域では、観光利用と保全管理の適切なバランスを取ることが強く求められる。観光行動による人々の移動は外来生物の分布域拡大の要因の一つとなることが知られており、特に外来生物による生態系の破壊が問題視されている世界自然遺産 小笠原諸島では対策が必須である。そのためにはまず、観光行動によってどのような種が、どのようなメカニズムを経て、分布域を拡大させているかを明らかにする必要がある。そこで本研究は、小笠原諸島父島において、車道および歩道に生育する外来草本植物に注目し、観光客の行動と外来植物の分布の関係を検討した。島内における歩道の利用目的を調査した結果、観光利用が最も多く、観光行動が外来植物の侵入を促す可能性が充分にあることが確認できた。しかし、車道および歩道において生息が確認された外来草本の分布および生態特性を検討した結果、すべての種が観光行動によって分布域を拡大させているわけではなく、人為改変や自然散布等、観光行動のほかに様々な要因が影響していることが示唆された。この結果は、小笠原諸島において外来生物の拡散を抑制しながら観光発展を目指していく上で留意すべき事項に示唆を与えるものである。