| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-393  (Poster presentation)

高知県香美市におけるニホンジカの捕獲圧の空間分布
Spatial distribution of capture pressure of sika deer in Kami City, Kochi Prefecture

*幸田将平(高知大・院), 比嘉基紀(高知大・理工)
*Shohei KOUDA(Sci. Prog., GSIAS, Kochi Univ.), Motoki HIGA(Fac. Sci. Tech., Kochi Univ.)

 近年,ニホンジカ(Cervus nippon,以下シカ)を含む増えすぎた野生鳥獣による農林業と生態系への被害が日本各地で問題となっている。効率的な鳥獣被害対策・個体数管理策の立案・実施には,野生鳥獣の分布・個体数と捕獲努力量,捕獲困難地域の分布を把握する必要がある。本研究では,捕獲困難地域の地理的特徴を明らかにすることを目的に,高知県香美市を対象として捕獲頭数と捕獲地点の分析を行った。高知県香美市における2016年度から2018年度までの有害駆除期・狩猟期のシカの捕獲位置情報の分析を行った結果,調査期間における捕獲地点の車歩道からの距離の全体平均は202 mで,全体の捕獲の95%は車歩道から650 m,99%は車歩道から1200 m以内で行われていた。猟法別では,わなによる捕獲の95%は車歩道から370 m以内,99%は車歩道から610 m以内で行われていた。一方,銃による捕獲の95%は車歩道から820 m以内,99%は1560 m以内であった。このような一般の狩猟者による個体数管理が望めない捕獲困難地域では,土地所有者あるいは自治体主導による捕獲策の立案が必要である。また,捕獲困難地域を減少させるためには銃猟に対する支援が必要である。捕獲地点データを集積している自治体は限られている。捕獲位置から得られる捕獲圧の空間分布情報は,効率的な鳥獣被害対策・個体数管理策の立案・実施には不可欠である。今後多くの自治体で同様の捕獲位置情報の集積が求められる。


日本生態学会