| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-398  (Poster presentation)

伐採後熱帯生産林における植生劣化と土壌炭素貯留量の関係 【B】
Relationships between vegetation degradation and soil carbon stocks in a tropical production forest 【B】

*Qianning QIN(Kyoto Univ.)

気候間で比較すると、土壌炭素貯留量は地上植生に応じて変化することが知られている。しかし、同じ気候内で森林がかく乱を受けた時に、土壌炭素貯留量がどのように変化するのかはわかっていない。本研究は、強度の異なる伐採を受けた熱帯降雨林の土壌炭素貯留量がどのように変動するのか、解明することを目的とした。
2020年にボルネオ島サバ州のDeramakotとTangkulap森林保護区において、過去の伐採強度の違いにより現在の地上植生の劣化度が様々に異なる35プロットにおいてフィールド調査を行った。これらの森林の原植生は一様に混交フタバガキ林であり、現在の土壌の違いは地上植生の劣化度の違いを反映している。各プロットにおいて、表層から50cm 深まで10cmごとに土壌を採集した。また、各プロットの毎木調査データに基づいて、地上植生の原生林からの組成的距離を求め、組成的距離が大きいほど劣化度が大きいとした。各土壌について、生土のpHと風乾土の全炭素濃度を測った。また、20~30cmの土壌サンプルを使い、XRF分析により全元素、Dithionite-Citrate抽出により結晶性Fe・Al、Oxalate抽出により非晶質Fe・Alを分析した。土壌炭素濃度は、各深度ともに、植生劣化度が大きいほど低かった。逆に、pHは劣化度が大きいほど高かった。非晶質Fe濃度は、土壌炭素濃度と正の相関を示した。
以上の結果より、地上植生の劣化が進むと、樹木の吸水機能が弱まったりバイオマスが低下して蒸散量が減り、土壌が過湿となり還元化し、FeとAlの溶脱が加速したのではないかと考えられる。その結果、非晶質鉱物によって安定化していた腐植が放出され、全炭素濃度が低下したと思われる。本研究より、伐採された熱帯降雨林では、土壌炭素貯留量と地上植生の劣化度の相関性が強いことがわかった。


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