| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-404  (Poster presentation)

市民科学プロジェクトへの参加の仕方によって市民の参加動機はどのように異なるのか? 【B】
How do motivations differ among ladders of participation in citizen science projects? 【B】

*高田陽(明治大学大学院), 倉本宣(明治大学)
*Yo TAKADA(Meiji Univ. Grad. school), Noboru KURAMOTO(Meiji Univ.)

市民科学はビックデータの収集が可能になり生態学の分野でも注目を集めているが、研究者にとっての利益だけでなく市民が主体的に関わることや市民の利益も重要である。社会に市民科学が定着するためには参加者の意識や参加動機を理解することが重要だが、市民の主体的な参加についての研究は少ない。そこで本研究では、市民がテーマの決定や調査の設計、考察、発表といった科学研究のプロセスに関わる市民科学プロジェクトを対象とした。本研究では、関わっている科学研究のプロセスによって参加動機がどのように異なるのかに注目した。日本国内の4つの鳥類を対象とした市民科学プロジェクトを対象とした。参加者に対して、参加動機13項目と参加している市民科学プロジェクトにおいて関わっている科学研究のプロセスへの参画の度合いについてそれぞれ5段階評価でアンケート調査を実施した。科学研究のプロセス(仮説の設定から研究の発表までのプロセス)への関わりの有無の調査から、科学研究のプロセス全体に関わる市民はごく一部であり、多くの市民はデータ収集にのみ関わっていることが明らかになった。クラスター分析の結果から科学研究のプロセス全体に関わる市民(運営者)とデータ収集にのみ関わる市民(協力者)に分けた上で参加動機を比較した。
運営者の参加動機は市民科学プロジェクトの目的に応じて、地域の自然への関心や、保全など具体的なテーマに関心が寄せられていた。一方で協力者の参加動機は市民科学プロジェクトに関係なく環境保全への関心と科学への貢献への関心が高い傾向にあった。これらから、データ収集などの部分的に関わる参加者は自分たちの活動の意義や社会への成果をより強く意識する傾向にあり、運営側の市民は、市民科学プロジェクトに対しては一部の興味を限定させて活動を行っている傾向にあると推察された。


日本生態学会