| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-408  (Poster presentation)

水田内に形成された内畔が水生生物群集に与える影響
Effects of inner levees formed in rice paddies on aquatic communities

*古郡憲洋(新潟大院・自然研), 本間航介(新潟大・佐渡自然共生)
*Norihiro FURUKORI(Grad. Sch. Sci., Niigata Univ.), Kosuke HOMMA(Niigata Univ, RSTER)

 陸域と水域の接続部分(水際部)には緩やかな環境の勾配が存在し,植物やこれらを資源とする生物群集の多様度が高まるとされる.里山景観は,水田やため池等の水域とそれらを囲む畦畔(陸域)がモザイク状に混在することから,他の景観と比較して水際部の面積が大きく,これが里山の生物多様性の維持に貢献している可能性がある.本研究では,水際部の面積(水田と畦畔の境界線の長さ)が水田内の微少環境および水生生物群集に与える影響を検証した.
 新潟県佐渡市新穂地域に水際部の面積が異なる3つの水田ビオトープ(100㎡)を造成し,水田内に10本の内畔を設置することで水際部の面積を変更した.3つの水田は,内畔が存在しないコントロール区(水際の長さ40m),長さ2mの内畔により水際の長さが80mに設定された区(80m区),長さ4mの内畔により水際の長さが120mに設定された区(120m区)に区分された.調査は,実験区の設置から1ヶ月後(7月)と3ヶ月後(9月)の2回行った.水性生物群集は,各実験区内の水際6地点と中心6地点の計12地点において,たも網を5回振り採集した.微少環境要因として,各実験区内の水温,水深,リター量を測定した.
 本研究では,25の分類群,計14565個体の水生生物を採集した.7月の各実験区内における水生生物の個体数に水際部の面積の違いによる顕著な差はみられなかった.9月の120m区では,コカゲロウ科やユスリカ科が増大し,水生生物の個体数が3つの実験区で最大となった.一方,9月の各実験区内に生息した分類群の多くは平面上の水際を選好し,内畔に挟まれた水際部では個体数が減少する傾向が示された.特に,水口から侵入し水底を這って移動するサカマキガイ科にとって,内畔は分布拡大を妨げる障壁となる可能性が示唆された.水田内の生物群集の多様度を高めるためには,水際部の面積だけではなく,その形状も重要な要因であることが示唆された.


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