| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-410 (Poster presentation)
モニタリング技術の進展により,ある生態系観測に対して取りうる手法はますます増えつつある.したがって,生態学の研究を効率的にする上で目的にあった手法の選択は重要な課題となる.その判断基準として,観測結果に含まれる誤差(観測誤差)の比較が有効であると考えられるが,変動する複雑な自然群集の観測に対して従来の線形モデリングのアプローチを用いることは難しい.そこで我々は,非線形時系列予測によるノイズ低減法(Simplex noise reduction, Tan 2017)を利用し,ノイズ削減のパフォーマンスと観測誤差量との関係に着目した評価方法を提案する.
本講演では人工時系列に対して適用した結果を発表する.具体的には,1)異なる4種の力学系から得られた2000点のデータに正規分布のノイズを加えることで人工観測時系列を生成,2)人工観測時系列にSimplex noise reductionを適用しノイズ低減時系列を取得,3)各ノイズ低減時系列と人工観測時系列との間の平均二乗誤差(MSE)を計算,4)得られたMSEと加えたノイズの大きさを比較,という4つのプロセスを実施した.
その結果,用いた4種類の力学系すべてで,加えたノイズの大きさに対するMSEの単調増加が見られた.このことから,本手法を用いることで,同一システムから得られた時系列データに含まれる観測誤差の比較が可能であり,コストパフォーマンスに応じた観測手法の提案に応用できる可能性が示唆された.