| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-009 (Poster presentation)
eDNAは希少種の生息場所の発見や生物多様性の評価をする上で非常に優れた調査手法である.しかし水生生物のeDNAは流れによる拡散・滞留や物理化学的環境による分解などにより,eDNAの検出結果には不確実性が含まれているため, eDNAの空間分布は生物の空間分布を反映するとは限らない.統合モデルは, presence/absenceを含む調査データとpresence-onlyの市民データなどといった量や質の異なる複数のデータを組み合わせる事で互いのデータの弱点を補い,より精度高く生物の時空間変動を推定することが可能なモデルである.そこで我々は,生物のpresence/absenceに関して情報は有するがその不確実性が大きいeDNAデータと,presence-onlyではあるが生物のpresenceに関して不確実性が小さい漁獲量データから,eDNAに対する海洋環境の影響を考慮しつつ生物の空間分布を推定するモデルを作成し,東京湾に生息する代表的な江戸前の魚たち4種(マアナゴ,コノシロ,マコガレイ,スズキ)に適用した.その結果,eDNAと漁獲量から推定された空間分布は推定されたeDNAの空間分布よりも狭い範囲に限定される傾向にあった.特に遊泳力の高いコノシロとスズキでは,推定されたeDNAの空間分布は湾内全域に広がっていることから,本研究で作成したモデルはeDNAの拡散や生物の移動によるeDNAの分散を考慮できることが示唆された.