| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-012  (Poster presentation)

ツキノワグマの環境選択と活動状態に気温変化が与える影響
Effect of temperature change on environmental selection and activity status of Asian black bears

*小池伸介(東京農工大学), 岩崎正(東京農工大学), 長沼知子(東京農工大学), 稲垣亜季乃(東京農工大学), 栃木香帆子(東京農工大学), 山崎晃司(東京農業大学)
*Sinsuke KOIKE(Tokyo Univ. of Agric. & Tech.), Tadashi IWASAKI(Tokyo Univ. of Agric. & Tech.), Tomoko NAGANUMA(Tokyo Univ. of Agric. & Tech.), Akino INAGAKI(Tokyo Univ. of Agric. & Tech.), Kahoko TOCHIGI(Tokyo Univ. of Agric. & Tech.), Koji YAMAZAKI(Tokyo Univ. of Agric.)

動物は恒常性により環境因子の変化に対しても生体の状態を一定に保つ。その中に熱調節機能があり、生理的な適応とそれを補助する行動的な適応がある。この行動的な適応には、高温を避けるために、気温が高い場所から相対的に気温が低い場所に移動する行動(以下、熱回避行動)がある。一般的に、熱回避行動を行う際でも、動物はなるべく食物資源量の多い場所を移動先に選び、採食量の最大化を確保すると考えられている。そこで、足尾・日光山地におけるツキノワグマの行動情報と気温情報を比較することで、気温変化に対するツキノワグマの生息地選択の変化により熱回避行動の有無を検証した。さらに、ツキノワグマの活動状態を3 つに分類し(移動・休息・採食)、その活動状態の選択が気温変化によりどのように変化するのかを明らかにした。その結果、夏の朝と昼に熱回避行動が認められた。さらに、昼には熱回避場所となる広葉樹林において採食を行う可能性が最も高くなった。しかし、夏の採食に適した環境は、広葉樹林(果実)と開放地(アリ)であるため、気温の上昇がツキノワグマの栄養状態の変化を与えている可能性が考えられる。


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