| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-015 (Poster presentation)
飼育下繁殖は、保全や生物資源管理の観点から、世界中の多くの種で行われてきた。しかし、飼育下繁殖された個体は、飼育環境への適応や近交弱勢の影響により、野外における適応度が低下することが懸念されている。この問題の解決策の一つとして、飼育下繁殖個体群に野生個体群の遺伝子を導入することが提案されてきたが、この解決策がどのようなdemographic effectをもたらすかは、依然として不明である。
本研究では、水産研究・教育機構が実施したサケとサクラマスの長期標識放流データを用いて、親世代の野生遺伝子の割合が飼育下繁殖個体群の野外における生存率に及ぼす影響を評価した。その結果、両種において、飼育下繁殖に用いる野生個体の割合が高いほど、飼育下繁殖で生まれた子の野外における生存率が高かった。一方、 飼育下繁殖に用いる野生個体の割合が高いほど、飼育下における生存率は低かった。 これらの知見は、野生個体と飼育下繁殖個体の両方を利用した将来の生物資源管理のあり方に、新たな洞察を提供するだろう。