| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-016 (Poster presentation)
砂礫河原には,カワラバッタやカワラハハコなど砂礫環境にのみ生息する砂礫性生物が存在する.これまで砂礫河原は,河川の攪乱により植生の発達が抑制され,また上流からの土砂供給により保たれてきた.しかし近年,全国的に河川の治水事業や護岸工事等により氾濫規模・頻度は減少し,安定化した環境では植生の遷移が進み,砂礫河原で植生の遷移が進んでいる.そのため植生が疎らな砂礫河原が消滅し,砂礫性生物が絶滅に追い込まれている.本研究ではまだ砂礫河原が存続している滋賀県東部を流れる愛知川の紅葉橋付近(河口から約27 km)と八千代橋付近(約20 km)を調査地とし,カワラバッタとその生息環境との関係性を解明することを目的とした.
調査は2020年8月~12月にかけて月に一度,各調査地において区画を設定し,その区画内のカワラバッタ個体数及び植生調査を行った.また,粒度組成調査も行った.
2調査地共にカワラバッタは8月から11月まで確認ができ,12月には確認されなかった.2調査地間において本種の平均個体数は2019年と異なり紅葉橋で有意に多く見られた.生息環境との関係を見たときカワラバッタの個体数密度は,植物量と有意な負の関係が見られ,また,カワラハハコ極小株(実生株を含む)の個体数と有意な正の関係が見られた.粒度組成では極粗粒砂(≦ 2 mm)の割合が高いとツルヨシやクズが繁茂しやすい環境であることが示された.
これらのことからカワラバッタはツルヨシなどが繁茂する環境では生息は難しく,砂礫環境に多かった.さらに先行研究においてカワラハハコの近縁種であるヤマハハコを食していることとカワラハハコ極小株数と正の関係が見られたことから,カワラバッタは砂礫環境に生息するカワラハハコを餌資源としており,さらに丈の低い極小株サイズ以下のものを利用していることが示唆された.