| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-018 (Poster presentation)
岩手県ではイノシシ(Sus scrofa)は明治期に絶滅したが,2007年以降県内各地で目撃されるようになった.岩手県におけるイノシシの目撃,被害,捕獲情報をまとめ,分布拡大の変遷を明らかにした.さらに,種の分布モデル(Species Distribution Model)を用いて,今後のイノシシの出没確率を予測した.2007年に奥州市で1件目撃された後,2010年まで岩手県内では目撃がなかったが,2011年より県南部を中心に目撃が増え,2018年には全県的に目撃されるようになった.被害は2012年から発生し,2014年から2017年にかけて増加した.雫石町では,2014年に初目撃があった.被害は2015年に発生し,被害面積は拡大している.目撃があった地域では,数年後に被害が現れる傾向が示唆された.こうしたことから2007~2010年を侵入期,2011~2017年を拡大期,2018年以降を定着期と呼ぶことを提案する.種の分布モデルによるイノシシの出没確率の予測には標高と植生データが有効であることがわかった.また,出没確率が0.54以上の地域で優先的にイノシシが出没していることがわかり,今後の分布拡大はこうした地域から出没が進んでいくことが予測された.