| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-021 (Poster presentation)
餌資源を共有する捕食者間で一方が他方を食べるギルド内捕食は,外来種が侵入した生態系の保全を考える上で重要な構造である.このなかで上位捕食者から中位捕食者への食べ残しの供給が,ギルド内捕食系の動態に与える影響に注目した研究は少ない.本研究は,豊富な餌資源(集団繁殖性渡り鳥オオミズナギドリ)と上位・中位捕食者(外来種のノネコおよびドブネズミ・クマネズミ)が生息する御蔵島で,上位捕食者(ノネコ)によるオオミズナギドリ死体の食べ残しの供給がギルド内捕食系の動態に与える影響を検討した.炭素・窒素安定同位体比によるノネコとネズミ類の食性の推定,現地踏査によるオオミズナギドリの死体数の季節変化の把握,生体捕獲によるネズミ類2種の空間分布,自動撮影カメラによるノネコの個体数と行動範囲の季節変化の推定を行なった.炭素・窒素安定同位体比から,ノネコは夏季にオオミズナギドリ,冬季にドブネズミを主食にすることが示された.また,自動撮影カメラで推定されたノネコの個体数と行動範囲の季節変化からも,各季節の餌種がノネコ個体群を支える重要な餌資源であることが示唆された.ネズミ類2種の空間分布からは,オオミズナギドリがドブネズミ個体群を支える重要な餌資源であることが示唆された.さらに,炭素・窒素安定同位体比とオオミズナギドリの死体数の季節変化から,ドブネズミは卵や雛よりも,ノネコが捕殺したオオミズナギドリの死体に依存していることが示唆された.これらの結果から,ノネコのオオミズナギドリの食べ残しが,冬のノネコの代替餌(ドブネズミ)を増やすことで,ノネコ自身への正のフィードバックが生じ,オオミズナギドリへの負の影響が強化されている可能性が示された.