| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-023 (Poster presentation)
河床を構成する土砂は、砂・礫・岩といった粒径の違いなどにより、河川生物に多様な生息場所を提供している。河床下の河床間隙域では、土砂間の空隙の大きさなどが異なることで、伏流水の流れやすさや含有物が変化し、多様な環境を作り出している。土砂中の微小な空隙を利用して生息する河床間隙生物は、生息場所の環境に応じて分布域を制約される。土砂の粒径や形状は、岩石の風化作用が深く関係しており、地質による影響が大きい。これらのことから、異なる地質の河床間隙域では、異なる河床間隙生物群集が構成されている可能性がある。河床間隙生物の群集構成の相違は、間隙域内で担われる生態学的役割や程度にも影響を及ぼす可能性がある。従って、異なる地質における河床間隙生物の群集構成を把握することは、河川生態系プロセスを理解する上で重要である。本研究では、熊本県北部の菊池川水系をメインに、花崗岩・安山岩・泥質片岩・溶結凝灰岩の4地質の渓流において河床間隙生物の群集構成を広域的に比較し、地質の違いが群集構成に及ぼす影響を明らかにすること、またその環境要因を特定することを目的とした。
調査は、各地質4~5本の渓流域支流において秋と冬の2回行われた。河床間隙生物は、ステップ上流流心の河床下25 cmから凍結コア法により各1サンプル採集された。0.25 mm以上の生物について検鏡したところ、164分類群3651個体群を得た。これらのうち、秋・冬を通した出現個体数が全体の10%以上を占めるタクサは、線形動物門、ユスリカ科、ソコミジンコ目、ミズダニ類の4タクサであった。溶結凝灰岩では、秋冬共に線形動物門が多かった。他の優占タクサは、秋と冬で密度個体数の多かった地質が異なった。発表では、地質間の間隙生物群集構成の相違について、生物のサイズや体形、生活型などでグループ化することにより行った解析結果と影響を及ぼしたと考えられる環境要因を示す予定である。