| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-027  (Poster presentation)

日本列島における島間でのコウモリ群集構造の比較
Comparing community structure of bats among islands in the Japanese archipelago

*牧貴大, 三宮望, 平尾聡秀, 福井大(東京大学)
*Takahiro MAKI, Nozomi SANNOMIYA, Toshihide HIRAO, Dai FUKUI(The University of Tokyo)

分散能力は生物の分布や群集構造のパターンを決定づける形質の一つである。陸生哺乳類では、飛翔性のコウモリがその他の非飛翔性哺乳類と比べて分散能力が高く、分布の地理的障壁が異なることが知られており、これらの違いが群集構造に痕跡を残していると考えられる。日本列島では、非飛翔性の陸生哺乳類において島の面積と種数が正の相関を示すこと、津軽海峡及び吐噶喇海峡が群集組成の境界線になっていることが知られている。一方、コウモリの場合、多くの種が北海道と本州との間に共通して分布するなど、非飛翔性の哺乳類と異なる群集構造のパターンが示唆されているが、これらの知見は記述的なものにすぎないため、分布データを統合した解析に基づく知見が求められる。本研究ではコウモリは高い分散能力によって非飛翔性哺乳類と比べて地理的障壁である海峡からの影響が小さい群集構造のパターンを示すという仮説を立て、特に①種数と島の特性(面積、孤立度等)の関係、②島間の群集構成の違いに着目した検証を行い、非飛翔性哺乳類との比較を通してコウモリ特有の群集構造の地理的パターンを明らかにすることを目的とした。
発表者らは合計2028点のコウモリに関する文献を収集し、島スケールおよび国土数値情報の1次メッシュ区画(一辺約80 km)スケールで分布データを抽出した。島スケールの分布データにでは、①種数と島の特性との関係性を、ポアソン分布を誤差分布としたGLMで検証し、②島間での群集構成は各島間の違いをβsimとして算出しクラスター解析(UPGMA法)を行った。1次メッシュスケールのデータについてもメッシュ間のβsimからクラスター解析を行い、より詳細な群集構成の地理的パターンを検証した。これらの結果をもとに既存の非飛翔性哺乳類のデータと比較し、コウモリ群集構造の地理的パターンの特性および、飛翔性の有無による分散能力の差が陸生哺乳類群集構造に与える影響について考察した。


日本生態学会