| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-032 (Poster presentation)
生息地の総面積が大きいほど生息種数は多くなる。サンゴ礁の航空写真にはリーフ(礁)が写るため,リーフ総面積からサンゴ礁魚の生息種数を予測できそうである。しかし,実際には,解像度の制約から1m2以下の小リーフは不明瞭である。小リーフは無視できるのだろうか? 石垣島白保サンゴ礁において,7区域内の小リーフ33個を含む84リーフを対象に,航空写真を地図として観察しながらリーフ形状を調べ,そこに生息するスズメダイ科魚類全種の種数を6回数えて平均生息種数を算出した。画像解析ソフト(PhotoshopとImageJ)によって7区画内のリーフ色彩の総面積を求め,生息種数との相関を調べた。さらに,航空写真で不明瞭な小リーフを含むリーフ群(6リーフ)を対象に,ドローン(DJI社Phantom4 Pro+)による空撮画像を地図として,個体数が多い10種を対象に,5分間個体追跡を繰り返して行動圏とリーフ内利用時間(秒)を調べ,リーフ内利用時間からリーフ依存度を評価した。画像解析により,海草群落を除いた後,リーフの色彩を抽出すると,区画内の生息種数はリーフ色彩の総面積(対数値)と極めて強い相関があり,回帰直線は生息種数の予測に有効であった。ミスジリュウキュウとミナミイソ,ダンダラ,オジロ(種名から“スズメダイ”を省略)は小リーフもよく利用した。藻食2種(ハナナガとクロソラ)と枝サンゴポリプ食1種(アツクチ)はリーフ依存度が高く,小リーフ以外で種間縄張りを示した。雑食6種(ミスジリュウキュウ,デバ,クラカオ,ネッタイ,ルリ,ミナミイソ)はリーフ依存度が低く,ネッタイ以外は種間縄張りを持たなかった。小リーフに種間縄張りはなく,競争劣位種(ミスジリュウキュウとミナミイソ)が生息した。小リーフは航空写真で不明瞭であるが,その存在は無視できず,画像ソフトを用いれば小リーフを含めた生息地の総面積を算出できる。