| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-047  (Poster presentation)

森林再生の波及効果:植物多様性とシカ食害の節足動物へのインパクト
Consequences of reforestation: impacts of plant diversity and deer herbivory on arthropods

*仲野友太(北海道大学環境科学院), 棚田愛美(北海道大学環境科学院), 南雲優哉(北海道大学環境科学院), 米谷衣代(近畿大学), 内海俊介(北海道大学FSC)
*Yuta NAKANO(Environ Sci, Hokkaido Univ.), Aimi TANADA(Environ Sci, Hokkaido Univ.), Yuya NAGUMO(Environ Sci, Hokkaido Univ.), Kinuyo YONEYA(Kindai Univ.), Shunsuke UTSUMI(FSC, Hokkaido Univ.)

森林再生は生物多様性と生態系機能の低下を防ぐために不可欠な事業である。これまでの研究では植生にのみ焦点を当てられることが主であったが、近年では、節足動物群集など多様な生物群への波及効果についても考慮する必要性が指摘されている。特に、植物の種様性や大型ほ乳類による食害は植生の回復に大きく影響し、その効果は節足動物群集にまで及ぶと考えられるが、これら複数要因の影響評価を同時に行った研究は少ない。また、従来ではこのような節足動物への影響評価は直接採集を行うことで進められてきたが、これは侵襲的な方法でもあり、再生過程の生物相に大きな攪乱を与えることが危惧される。そのため、より適切に節足動物群集への波及効果を観測する手法の確立が求められる。
そこで本研究では、植物の種多様性とシカ食害が森林再生の波及効果に与える影響を明らかにすること、および未だ陸上の節足動物への適用については発展途中である環境DNA(環境中に残存する生物由来のDNA)による非侵襲的な調査方法の確立を目指すことを目的とした。
研究は皆伐地に設けた再生実験区にて行なった。実験区はトドマツ、ダケカンバ、オノエヤナギの木本3種からなり、そこに単植・混植処理及びシカ柵あり・なしの処理が施してある。群集調査は、見つけ採り法による調査と、採集した環境DNAを用いたメタバーコーディングによる手法を並行して行なった。また、調査で得られた標本試料からDNAを抽出し、メタバーコーディングの対象となる配列データベースの構築も行なった。
見つけ採り法による調査の結果、森林再生初期段階において、植物多様性と食害のそれぞれによって節足動物群集の組成が有意に異なり、食害によってβ多様性が増大する事が明らかになった。また、採集した環境DNAによるメタバーコーディングの結果、多数のOTUが検出された。今回はこれらの結果について議論する。


日本生態学会