| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-060  (Poster presentation)

寄生バチMelittobiaの性比における局所的資源増進(LRE)の検討
Possibility of local resource enhancement (LRE ) for the sex ratio in the parasitoid wasp Melittobia

*安部淳(明治学院大学)
*Jun ABE(Meijigakuin University)

寄生バチMelittobiaの示す極端な雌偏向性比は長年の謎であったが、雌が分散せずに同じパッチの別の寄主に産卵する場合は、血縁の高い雌が一緒に産卵するため、血縁のある息子どうしの競争を避けるように雌に偏った性比で産んでいることが最近明らかになった(Abe et al. 2020, bioRxiv)。しかし、野外で観測された性比は、雌の分散経験を組み込んだ数理モデルの予測に定性的に一致するものの、定量的には予測される性比よりもまだ雌側に偏る。一方、多くの他の寄生バチは他の雌と産卵するのを避けるのに反し、Melittobiaの雌は他の雌が産卵している寄主に好んで産卵することが確認されている。このため、産卵する雌間に何らかの協力的要因が存在するため、性比がより雌に偏る可能性が考えられる(局所的資源増進, LRE; Iritani et al. 2021, Evolution Letters)。
これまでの予備的な実験では、雌が単独で産卵したときに比べ、他の雌と一緒に産卵すると、雌1個体あたりの子の数が増える場合とそうでない場合が確認されている。そこで今回は、雌の羽化後の日齢を操作し同様な実験を試みた。羽化直後の雌と羽化後15日齢の雌それぞれを、単独もしくは2個体で産卵させた。その結果、いずれの日齢の雌とも2個体で産卵しても子の数が増えることはなく、雌の日齢は協力的要因には影響しないことが示唆された。ただし、本実験で得られた結果はすべての場合において、本種の雌1個体が通常産む子の数に比べて著しく少なく、実験環境もしくは雌の状態が適当でなかった可能性があり、本結果の解釈には注意が必要であるかもしれない。


日本生態学会