| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-062  (Poster presentation)

飼育実験による北海道産トガリネズミ属4種の3次元空間利用の種間差の解明
Study of interspecific differences in three-dimensional space use among four shrew species by using captive individuals in Hokkaido, Japan

*Sakura YAJIMA(Nihon Univ.), Satoshi OHDACHI(Hokkaido  Univ.), Atsushi KAWAHARA(Ministry of the Environment), Yoshihiro NAKASHIMA(Nihon Univ.)

北海道に生息するチビトガリネズミは,睡眠や餌の探索行動などを目的とした草本類の頻繁な利用が観察されている.世界最小の哺乳類の一つである本種の体重は約2gであり,体重の軽さが生息環境の3次元的利用を可能にし,結果として他種との競争を緩和している可能性がある.しかし,本種と同所的に生息している他トガリネズミ属3種(ヒメトガリネズミ, エゾトガリネズミ, オオアシトガリネズミ)の草本の利用頻度についてはこれまで観察報告がない.そこで本研究では,これらトガリネズミ属4種を対象として室内の飼育実験下で観察を行い,草本もしくは小枝への登攀の有無と登攀した頻度及び利用時間を調べた.チビトガリネズミは,北海道厚岸郡嶮暮帰島において,それ以外の3種は北海道厚岸郡浜中町と札幌市定山渓において捕獲した.観察は,北海道大学低温科学研究所の飼育施設において行った.これらの結果,4種とも頻繁に草本もしくは小枝上に登攀することが分かった.最も一番登攀する可能性が低いと思われていた大型のオオアシトガリネズミにおいても登攀行動が確認できた.しかし,本種は地表行動や穴掘りなど登攀以外の行動が多く,登攀頻度および滞在時間とも他種に比べて有意に低かった.そのほかの種に関しては,チビトガリネズミとの間に,登攀頻度や滞在時間に有意な違いは見られなかった.今回実験に利用した草本が比較的しっかりとした登攀しやすいものであったことが種間差をなくした可能性があり,3次元空間利用の種間差を定量的に評価するためには,今後さらなる実験方法の検討および観察方法の改良が必要であると考えられた.


日本生態学会