| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-065 (Poster presentation)
サンゴ礁に生息する藻食性スズメダイ類は、なわばりを防衛して、芝状藻類の繁茂した藻園を摂餌の場として維持する。この芝状藻類は、サンゴの大規模白化等で多くのサンゴが死滅した後に優占することが世界中のサンゴ礁で観察されている。この芝状藻類はサンゴと基盤と光をめぐる競争関係にあり、芝状藻類の繁茂はサンゴ群集の回復に影響を及ぼす。なわばり性スズメダイは、芝状藻類の繁茂を助け、大規模撹乱からのサンゴ群集の回復を間接的に妨げるかもしれない。また、なわばり性スズメダイは時になわばり周縁のサンゴをつついて直接効果としてサンゴ群体に負の影響を与えうる。そこで、本研究では、沖縄県で、塊状ハマサンゴ群体上に多くなわばりを形成するクロソラスズメダイとハナナガスズメダイを3年間に亘って観察し、それらのなわばり外縁において、藻園をなす芝状藻類とハマサンゴとの競争関係と、これらの競争関係にスズメダイが与える影響を調べた。その結果、両種のスズメダイのなわばり外縁のハマサンゴ群体上に、スズメダイによる白い食痕が形成され、その面積の73%は、2週間のうちに藻類に覆われた。この白い食痕の面積が大きいほど、そのなわばり境界は、藻類がサンゴを被覆していく方向により拡張していった。一方、スズメダイはなわばりを放棄することがあり、スズメダイがいなくなれば、サンゴが藻類を被覆していくことが観察された。これらの結果から、スズメダイは、サンゴ組織を噛り食痕をつくりそこに藻類の着底を促して、それを飛び石としてサンゴ上に藻園を拡張していくこと、一方で、なわばりは放棄されることがあり、それがサンゴ群体の回復に寄与していることがわかった。