| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-085 (Poster presentation)
小笠原諸島と大東諸島は過去に大陸と繋がったことのない海洋島であるのに対し、琉球列島は最終氷期には台湾を経て大陸と繋がっていた大陸島である。本研究では、広域分布種であり、日本では琉球列島、大東諸島、小笠原諸島(小笠原群島、硫黄列島)に分布するアカテツにおいて、マイクロサテライトマーカーを用いて各地域の遺伝的多様性を比較し、遺伝構造と集団動態を明らかにした。
遺伝的多様性は琉球列島で高く、小笠原群島、大東諸島で中程度、硫黄列島で低い値を示した。琉球列島は大陸島であり古い島であるために遺伝的多様性が高いのに対し、硫黄列島は海洋島で新しい島であるために遺伝的多様性が低いと考えられた。遺伝構造は、STRUCTURE解析の結果、ΔKによる最適なクラスター数は3となり、①琉球列島+大東諸島、②硫黄列島、③小笠原群島に分けられた。これらの3つの地域を対象に集団動態を推定したところ、①琉球列島+大東諸島と③小笠原群島では集団サイズは過去から一定であるのに対し、②硫黄列島では集団サイズの減少が検出された。分岐モデルは祖先集団から①琉球列島+大東諸島と③小笠原群島が分岐したのちに、③小笠原群島から②硫黄列島が分岐したモデルが選ばれた。また、これらの3つの地域間で移住を想定したモデルは選択されず、集団間の移住はほとんどないことが示された。