| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-087  (Poster presentation)

アカマツ広域産地試験の山陰試験地における初期成長と球果着生量の産地間差
Provenance variation in early growth and cone production in the common-garden of Pinus densiflora in San-in site

*岩泉正和(森林総研林育セ関西), 篠﨑夕子(森林総研林育セ関西), 河合慶恵(森林総研林育セ関西), 山田浩雄(森林総研林育セ関西), 那須仁弥(森林総研林育セ東北), 礒田圭哉(森林総研林育セ)
*Masakazu G. IWAIZUMI(FTBC, FFPRI Kansai), Yuko SHINOZAKI(FTBC, FFPRI Kansai), Yoshie KAWAI-MUNEHARA(FTBC, FFPRI Kansai), Hiroo YAMADA(FTBC, FFPRI Kansai), Jin'ya NASU(FTBC, FFPRI Tohoku), Keiya ISODA(FTBC, FFPRI)

アカマツは本州・四国・九州に分布する日本の主要針葉樹の一つであるが、近年マツ材線虫病被害の拡大により天然資源が減少し、遺伝的多様性の喪失が危惧されている。遺伝的多様性を保存するためには、人為的に保存する生息域外保存が有効であるが、そのためには、移動に伴う環境変化に対する成長特性や繁殖特性(着花・結実量等)の応答性を理解することが不可欠である。林木育種センターでは全国各地の有名アカマツ天然林由来の実生家系を共通環境下で育成する広域産地試験に着手しており、これまでに苗畑での実生の発芽時期や伸長成長時期等の地理的クラインが認められている(岩泉ら 2018;2019;過去大会)。しかしながら、繁殖特性における体系的な環境適応性の知見は少ない。そこで本研究では、植栽4~6年後のアカマツ広域産地試験地で成長量とともに雌花や球果の着生量を調査し、その家系間差や地理的傾向について解析した。
調査地は、鳥取県智頭町で2015年春に植栽したアカマツ広域産地試験地であり、青森県から宮崎県までの全国10産地で各5母樹から採種した計50家系の実生家系(計573個体)を対象に調査を行った。2018年(4年次)~2020年(6年次)まで3ヶ年にわたり、個体毎に成長量(樹高と胸高直径)を計測するとともに、当年球果と雌花(翌年果)の着生の有無を測定し、2019年から2ヶ年は当年球果の着生数もカウントした。
その結果、家系毎の成長量には明瞭な地理的傾向は見られなかった。球果・雌花の着生個体率や個体当たりの平均着果数は北の産地ほど高い傾向が見られたが、年次が進むほど地理的傾向は弱くなった。一方で、成長量と上記繁殖量の正の相関は年次が進むほど高くなった。このことから、北の産地の家系ほど若齢から着花・果するという地理的変異が考えられる一方で、齢が進むにつれてサイズ依存性の方が大きく影響する可能性も考えられた。


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