| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-089 (Poster presentation)
堅果の豊凶性は10~数10年のスケールで年代変化することが報告されるようになった。北上山地の中居村試験地(岩手県)では、過去40年間でミズナラの豊凶周期が3〜4年から2年に短くなるとともに結実数も増えており、その変化を駆動しているのは気温であることが示唆された。気候条件や樹種が異なる場合でも豊凶年代変化はあるだろうか。また、豊凶年代変化にともなって樹木の更新パターンも変わるのだろうか。
本研究では、中居村よりも南方にある阿武隈山地の小川試験地(茨城県)のブナ科5種(ミズナラ、コナラ、クリ、ブナ、イヌブナ)について、種子トラップによる堅果生産(1987~2018年)と実生発生(1988~2019年)の年変動データをまとめた。観測期間全体を通して、小川付近でも気温は上昇傾向にある一方で、特にミズナラ、コナラ、クリでは未熟堅果が増えていることが明らかになった。約30年間で雌花数が増えるも、その多くは何らかの要因で成熟前に脱落していることになる。成熟後の堅果の年変動をみると、ミズナラの豊凶は基本的に2年周期が続き、他の樹種では2010年代に周期性が認められなくなった。どの樹種も成熟堅果数については中長期的な増減傾向はなかったが、ブナ、イヌブナ、クリでは虫害堅果が増えた。そして、ミズナラ以外では見かけ健全堅果数も実生発生数も減った。このように、異なる気候条件や樹種でも豊凶年代変化はあるが、そのパターンには相違があることがわかった。また、小川での近年の豊凶年代変化は樹木更新には不利になりそうだ。