| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-090  (Poster presentation)

異所的に生育するムカゴをつけるイブキトリカブトの繁殖様式比較
Comparison of reproductive systems of allopatrically growing Aconitum japonicum Thunb. subsp. ibukiense (Nakai) Kadota having bulbils

*小﨑和樹(滋賀県立大学), 鳥居万恭(京都市大原野森林公園), 増戸秀毅(京都市大原野森林公園), 近藤和男(京都市大原野森林公園), 野間直彦(滋賀県立大学)
*Kazuki KOZAKI(The Univ. of Shiga Pref.), Kazuyasu TORII(Oharano Forest Park), Hideki MASUDO(Oharano Forest Park), Kazuo KONDO(Oharano Forest Park), Naohiko NOMA(The Univ. of Shiga Pref.)

トリカブト亜属植物は一般に種子と塊根によって繁殖するが、ムカゴによる無性生殖も行う種が存在する。日本でムカゴをつける本亜属の種は、長い間2倍体のジョウシュウトリカブトだけとされていたが、先年、京都市大原野森林公園に生育する4倍体のイブキトリカブト集団中にもムカゴをつける個体が見いだされた。さらに他地点のイブキトリカブト集団中にも発見されたが、産地によってムカゴつき個体の割合や結実量に違いがみられた。そこで本研究では、京都・滋賀におけるムカゴつきイブキトリカブトの分布を明らかにし、その繁殖様式を地域ごとに調査し比較を行った。その結果、調査した14地点中9地点のイブキトリカブト集団中にムカゴつき個体を発見した。そのうち滋賀県の①霊仙山②中河内③平池④坂下、京都府の⑤花背⑥大原野森林公園の集団において以下の調査を行った。1)袋果、ムカゴつき個体の割合の調査を地点③④⑤⑥で行った。2)子根の数と種子生存率の調査を地点①②③④⑤⑥で行った。種子生存率はTTC試験によって調べた。1)の結果、(袋果・ムカゴ)をつけた個体の割合(%)は、③(23.6・27.3)④(39.6・10.7)⑤(19.4・36.1)⑥(0・80.0)となった。1個体あたりのムカゴの数は③0.5⑤1.1⑥3.4であった。2)の結果、子根の数(平均±SE)は①2.1±0.30②2.6±0.30③2.1±0.29④2.1±0.36⑤2.8±0.36⑥2.9±0.42となった。種子生存率(%)は①41.7②75.0③16.7④0⑤31.7であった。種子生存率や結実・ムカゴつき個体の割合には地域差が見られたのに対し、子根の数における地域差は小さかった。種子やムカゴによる繁殖の優位性は生育環境によって変化するが、子根による栄養繁殖は最も重要で、その役割は普遍的だと考えられる。また、ムカゴをつける個体の割合が大きくなった大原野森林公園と花背では、結実した個体の割合が他の地点よりも小さかった。何らかの理由で結実が減少した集団では、より多くのムカゴをつける可能性がある。


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